高松高等裁判所 昭和30年(う)325号 判決
まづ論旨第一点(二)について所論原判決の法律の適用の当否について考えてみると原判決がその認定した事実についてこれを常習特殊窃盗として盗犯等防止及び処分に関する法律第二条第四号を適用していること、及び被告人は昭和二六年七月二一日長崎簡易裁判所において窃盗罪により懲役三年(昭和二七年政令第一一八号減刑令により懲役二年三月に減軽)に処せられ昭和二八年一〇月五日その執行を受け終つたものとして原判決認定の犯罪事実一覧表1乃至5を除くその他の事実に刑法第五六条第五七条を適用し、再犯加重をしていることは孰れも原判決の記載から洵に明らかである。
ところで常習特殊窃盗罪の如く数個の犯罪が含まれていても一罪として処断する犯罪にあつてはその実行着手の時期は最初の犯行に着手したとき全体(総括一罪)として犯罪実行の着手があつたものと解するを相当とするからこれに対し再犯の加重を為すには少なくとも最初の犯行着手のときにおいて前刑の執行を終つていなければならない筈であつてたとえ日時の関係において犯行の一部に前刑の執行を終つた後に犯されたものが含まれていてもその部分についても再犯の要件は具備しないものと云わなければならない。ところが本件の場合記録によると最初の犯行は昭和二八年八月一六日であつてその後昭和三〇年四月二九日迄前後三七回に亘り常習としてその犯行が繰返されたと云うのであるから前刑(前掲長崎簡易裁判所における窃盗罪)の執行の終つたのが前記の通り昭和二八年一〇月五日である以上当然再犯の要件はこれを具備しないものであつて原審が前記の通り刑法第五六条、第五七条を適用し再犯の加重を為したのは明らかに法令の適用を誤つた違法があるものである。のみならず弁護人が論旨第一点(一)において主張するように原判決は一罪として処断すべき本件常習特殊窃盗罪に対し刑法第四五条、第四七条、第一〇条を適用して併合罪の加重を為していることは所論の通りでありこの点にも明らかに法令の適用を誤つた違法がある。しかもこれらの違法は当然判決に影響するものであるから原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。
(裁判長判事 三野盛一 判事 谷弓雄 判事 合田得太郎)